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プリンス×プリンセス

第34章 サーバル国へ

礼を言って通り抜けようとした時

「あ…テリオス様」

従者に突然名前を呼ばれて、驚いて目を見張った。

「はい!?」

何で俺の名前を知ってるんだよ!?

すると従者は目を細めて

「こちらから庭へ降りられます。よろしければそちらをご逍遙下さい」

そう言って一礼する。

「あ…ありがとう。そうさせてもらうよ」

俺の返事に顔を上げると、にこりと微笑んだ。

その笑顔も…何だろう?

気持ちのこもらない、作り笑顔に見えて仕方ない。

言われるまま、バルコニーを伝って庭を目指し…そこで気付いた。

あ、そうか。

出会って間もない頃の、ジュークの表情に似ているんだ。

「アイツも本心から笑ってないもんな」

あくまでも仕事上の微笑み。

そういうのって、従者としては優秀なのかもしれないけど…さ。

「疲れねぇのかな?」

階段を下りて、庭を散策する。

薦めるだけあって、手入れの行き届いた庭木には盛りとばかりに花が咲き誇っていた。

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