テキストサイズ

プリンス×プリンセス

第35章 噴水の前での約束

すると、誰かの足音が近付いてきた。

その方向を見れば…

短めの黒髪、黒色のスーツ姿の男が歩み寄って来ていた。

あれは…パーティー会場で警護をしていた従者だ。

あの時と同じ、張り付けたような笑みを浮かべている。

俺たちの傍へ近付くと、胸に手を当てて頭を下げた。

「シエンタ様、失礼します」

「アリオン…どうしたの?」

「お時間です。そろそろお戻りください」

アリオンが淡々と告げると、シエンタ王女が驚いて目を見開き

「あ…分かりました。すぐ」

慌てて立ち上がると、俺を振り返った。

「テリオス様も、どうぞ」

「あ…はい」

促されて立ち上がった俺に、アリオンは頭を下げた。

「申し訳ございません。シエンタ様は準備がございますので、テリオス様はお先にお戻り下さい」

あ…そうですか。

一緒に会場へ戻ったら、それはそれで面倒な事になりかねないしな。

アリオンの計らいに安堵の息を吐いて、笑顔を作ると、シエンタ王女に声をかけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ