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プリンス×プリンセス

第38章 奸計(かんけい)

ドア越しに掛けられた声は、力強くて落ち着いたものだ。

でも…聞き覚えがない声だ。

それはジュークも同じだったのかもしれない。

「電話?」

鋭い口調でドア越しに問う。

その声の意味を分かっているのかいないのか。

先程と変わらない、落ち着き払った声音が聞こえた。

「はい。至急との事で」

その言葉にジュークが一瞬眉をひそめて、ディオに視線を向ける。

ディオが片方の口角を上げて笑みを浮かべると、ジュークは諦めたように息を吐き、扉に手をかける。

開いた先にいたのは、頭を下げているせいで、銀髪が印象的に映る男。

シエンタの運転手だ。

「申し訳ございません」

運転手は頭を下げたまま詫びると、アリオンへ携帯電話を差し出した。

「キャロル女史よりお電話です」

その名前を聞いて、アリオンが狼狽した。

「は…何故?」

「いえ…私からは何とも…」

何の感情も写さない漆黒の瞳を向けられ、アリオンは眉を寄せると、携帯電話へ手を伸ばした。

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