テキストサイズ

プリンス×プリンセス

第6章 婚約発表

「冗談だよ。そんな気にするなって」

顔を近付けて、覗き込むようにして笑いかけた。

だけど姉上は目を伏せて…口元をきゅっと引き絞った。

「そんなに気にしてるのか?」

「それは…そうでしょ?」

小さく答えたその声はかすかに震えていて…

「良く思われてないのは分かってるから…」

姉上は大きく息を吐いて、目を閉じた。

そんな様子を見て思う。

やっぱり姉上も気付いていたんだ。

この国の国民の中に、この婚姻を望んでない人がいるって事に。

「そんなのは仕方ない事だろ?姉上のせいじゃない」

「だけど、もっと栄えた国の姫ならって望む気持ちも分かるのよ」

「だからって…」

そんなのは婚約する前から分かってた事じゃないか。

それに…あいつ自身が言ったんだぞ!?

無難だ、って…。

「テリオス、私、出来る限り頑張るから」

姉上はゆっくり笑みを浮かべると、俺の手をとった。

「今は無理でも、いつか認めて貰えるように。ディオチェスター様の力になれるように」

俺の手を握りしめて、誓いのように自分の決意を語る姉上。

その手は冷たくて、細くて…微かに震えていた…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ