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プリンス×プリンセス

第44章 唇の痕

目元を軟らかくして笑いを浮かべて…

そんな…普段見せないような、優しい顔。

「そんな笑い方は…困る…」

ぼそりと呟くように文句を言ったものの…

「困る…か?」

ディオが俺の表情を窺うように見ている。

あ…そうじゃない。違うんだ。

別に嫌だって言うんじゃない。

どんな言い方なら伝わるんだ?

自分のボキャブラリーの無さを痛感して顔を赤くすると、俺を抱き締める腕の力が強くなった。

包み込まれるように抱き締められ、頬をくっつけてきて…

くそっ!!

こういうの、慣れない。

妙にソワソワするし、ドキドキして落ち着かなくて…どうしたらいいのか、分からなくなる。

ディオの顔が見れなくて、目線だけ反対側へ向ける。

どうしたら…なんて分からない。

…だけど。

そのまま目を閉じて、深く息を吐き出す。

ディオの頬は暖かくて。

ディオの髪が顔にかかって、少しくすぐったい。

ディオの呼吸を感じて、匂いに包まれて。

ずっとこのままでもいいかな、なんて思えてしまう。

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