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プリンス×プリンセス

第44章 唇の痕

「眼鏡、落ちた!」

眼鏡を拾うついでに下ろしてもらおう。

ディオに注意を喚起したのに、返ってきたのは素っ気ない言葉だった。

「後で拾う。どうせ伊達だろう?」

それはそうだけど!!

別に、眼鏡がなくても不自由じゃないけど!!

絨毯の上で一回跳ねて転がる眼鏡が、何だか自分みたいに思える。

落ちても音さえしない。

誰にも見向きされなくて、見放されているようで…

「行くぞ」

「あ…」

俺の思いなんか気にもしないで、ディオがそのまま歩き出した。

うわ。揺れるっ!!

膝の辺りを抱えられてるだけだから、やけに不安定で仕方がない。

とっさにディオの背中辺りの服を掴んでバランスを取る。

そんな俺の様子に、ディオが短く笑うのが聞こえた。

くっそぉっ!!

まるで物のような扱いに、怒りと不満が膨れ上がる。

すると、寝室に入ったのか、ベッドに投げ込むように下ろされた。

「く…っ!!」

多少の衝撃を覚悟したのに、ふわりと包まれるようで…何も痛くない。

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