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プリンス×プリンセス

第45章 痕跡

俺の心に浮かぶ澱に気付かず

「メイドの中から選ばれるというお話でしたが…」

メイド頭―彼女の名前はオルティアと言ったな―は口元に手を当てると、一層声を潜めた。

「誰が選ばれたのでしょう?」

生真面目な人だと思っていたのに。

そんな下世話な内容が気になるのか。

夜伽相手はまだ選考の段階で、候補者が数名に絞られたくらいだ。

それなのに、あなたの言い方は、まるで決定したかのような口ぶりではないか?

不快さを押し込めて、いつも通りの笑みを浮かべると

「以前にも申し渡しましたが」

少し身を屈めて、オルティアとの距離を詰める。

「今回の件、『誰が』選ばれたのかを公表するつもりはありません」

誰が、を強調して言うと、オルティアは一瞬眉を歪めた。

「働いている者同士でいざこざは起こしたくありませんからね」

詮索は無用です。

そう思わせるように強めに話すと

「それは分かっております」

オルティアは胸の前で両手を握りしめた。

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