テキストサイズ

プリンス×プリンセス

第45章 痕跡

「ですが…今朝、若君のお部屋の清掃を致しましたら、その…」

若君。

ディオチェスター様をこう呼ぶのは、城の中でも数名しかいない。

それほど長きに渡って勤務してくれている彼女が、こんなにもためらいながら話すなんて。

「どうかしたのですか?」

嫌な予感がして、思わず声を潜めると

「その…シーツに情交の痕跡がありまして…」

「は…」

情交?

…誰と?

絶句したままオルティアを見続けていると、それをどう受け取ったのか

「それで…夜伽が始まったのかと、メイド同士で探りあいが…」

オルティアは眉をひそめ、苦々しげな表情を浮かべて話す。

「はぁ…成る程」

そう呟いたものの…

それ以上、話す言葉を見つけられない。

何故なら、夜伽は始まってもいないし、相手も決まっていないから。

ティアナ様がお相手を務められる状態ではない事は明らかで…

だとしたら…誰と情を交わしたと言うんだ?


ストーリーメニュー

TOPTOPへ