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プリンス×プリンセス

第45章 痕跡

元々、それほどお体の丈夫な方では無かったらしいが、妊娠をしてから余計に調子を崩している様に窺える。

「では、起きた時にでも」

トレイごとグラスを手渡すと、シルフィは戸惑いの色を濃くした。

「はい。これは…?」

「レモネードです」

俺の言葉に、シルフィは目元を柔らかく緩めた。

ティアナ様にとって、この飲み物の意味する所を知っているんだな。

「かしこまりました。お預り致します」

「それでは、頼みますよ」

シルフィに後を任せ、ディオチェスター様の執務室へ向かう。

先程目を通してもらった文面に問題がなければ、あれを補足する資料に不備はない。

あれ以上の準備は…必要ないか?

執務室の扉をノックする。

それに呼応する音はなく…

念のためにもう一度ノックをしてから扉を開いた。

まだお戻りではない、か。

無人の部屋に入り、主の机の上を眺めれば、用意した書類に書き込みの跡が残されていた。


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