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プリンス×プリンセス

第53章 トラウマ

ノックをしようとしていた手を握りしめる。

ググッと音が出るほど握りしめている事に気付き、そんな自分に苦笑いを浮かべた。

思っていた通りの展開。

それを望んでいたはずなのに…どこで間違ってしまったのだろう?

……まあ、いいでしょう。

キサンタンガムで、テリオス様は狙い通りの行動をしてくれた。

これはそのご褒美です。

「今のうちにお楽しみを」

低く呟いて、一度目を伏せると…

心の整理をして、その場を離れた。

足は真っ直ぐに自分の部屋を目指す。

ドアを開き灯りをつけると、いつも通りの簡素な室内が迎え入れる。

必要最小限の物しか置かないようにしている部屋。

それはつまり、いつでも出ていける様にした表れで…

母が死に、この城に来てから、今でもずっとその気持ちに変わりはない。

出ていきたいならすぐに出来る。

今、それをしないのは……

ネクタイを緩めると、ジャケットを脱ぐ。

ハンガーにかけようとして…ふと、さっきのティアナの姿を思い出した。

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