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プリンス×プリンセス

第9章 ファーストキス

俺だって一国の王子なんだからな。

俺の安否も報道に伝達してある、って訳か。

「弟君が負傷、ご自身も襲われて、恐怖をお感じでしょう?」

「それは…」

あの時の姉上が思い出される。

恐怖に目を見開き、がくがくと震える体…。

「はい、驚きました」

「犯人に一言おっしゃられるなら何と?」

あれを一言でなんて語れない。

だけど、伝えたいことは…

「あの方の気持ちも分からなくはない…です」

「おい」

隣で、ディオチェスター王子が顔をしかめた。

だけど、ちゃんと伝えたい。

俺は椅子から立ち上がると、記者席を一望した。

「私の国は、フェールロコノのようにめざましい産業がある訳ではない、小さな国です」

俺の誇りの国は、外貨なんて稼げない。

豊かな自然と風景を武器にした観光業でしか、外国人がやってこないような国だ。

「そして私自身も、何かの才能に秀でた部分がある訳ではない、普通の人間です」

姉上をこんな風に言ってごめん。

だけど、許してくれるよな?

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