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プリンス×プリンセス

第60章 罪と信用

「交渉決裂ですね」

冷たい声で言い捨てると、バスケットを持ち上げて立ち去ろうとしたんだ。

思わず叫んじまった。

「何で!?」

そしたら苦々しい顔で睨んで、口元に人差し指を当てると

「騒がないで下さい。起きるでしょう!?」

あ…。赤ん坊の為ね。

こくこくと何度か頷いて、声を潜めて聞く。

「何で?俺、時間通りに来ただろ?」

「あなたを呼んだ覚えはありません」

「アイツじゃなきゃダメだって事?」

「当たり前です。どこの誰かも分からないのに、預けられるとでも?」

ま、確かにそうだよな。

…って事は、男にとって赤ん坊は大事な存在だって事か。

いや、金になるから商売道具として大事なんだろうか?

でもなぁ。俺も金が欲しいんだよ!

「だったら名乗ればいい?そしたらどこの誰かは分かるだろ?」

必死に食い下がると、男は辟易したようで

「そういう問題じゃ…」

そう言いながら俺と距離を取ろうとしている。

逃がしてたまるか!!

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