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プリンス×プリンセス

第66章 湖畔の少年

その頃、トグル王国ではー

夕暮れ時。

湖畔に落ちるオレンジ色の陽の光が、小波を煌めかせている。

「…全く」

腰に手を当てて大きなため息をつくと、一番幹の太い木を見上げて呼びかけた。

「ユーノス!いるのでしょう!?」

その声に応じて、木の葉の擦れる音と共に不機嫌そうな声が聞こえた。

「何だよ。いたら何だってんだ!?」

姿は見えないものの、盛大な欠伸の音に、グレイスはため息をついた。

「お昼寝、気持ち良さそうね」

「あー…そだな」

のんきなその声に、怒鳴りたい気持ちをぐっと堪えた。

「でももう夕方ですけど」

「おー、そうだな。見れば分かる」

のれんに腕押し。

嫌味を込めた言葉も、この人には何の意味もないのかしら?

「あなたに頼んだ仕事。まさか忘れてないわよね?」

「分かってるっての」

その声と共に、ユーノスは枝から飛び降りた。

ふらつくこともなく楽々と降り立つと、グレイスを見て苦笑いを浮かべた。

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