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プリンス×プリンセス

第66章 湖畔の少年

「だけどよ、子守りなんてしたことないからさ」

ユーノスは大袈裟にため息をつくと、ミルクティーベージュの髪をかきあげた。

「そんなの、乳母とかシッターの仕事だろ?」

片方の眉を上げて顔をしかめるユーノスに、

「ならばあなたはシッター以下ということね」

グレイスがピシャリと音がしそうな鋭さで咎める。

冗談のつもりだったのに、笑いのひとつも起きない。

むしろグレイスの態度が頑ななまま、自分の評価まで下げられそうな雰囲気だ。

「俺をバカにするなよ!?」

何で冗談だって分からないんだよ!?

「バカになんかしてないわ。あなたの意識の問題よ」

グレイスは急に怒りだしたユーノスを、怪訝な表情で見て言った。

「ともかく、『仕事』なんだから」

あ。この顔。

グレイスのこの表情には見覚えがあった。

まだグレイスが高等科にいた頃。

執行部の部長だったグレイスに、新入生の俺は常に指図を受けていた。

「分かってるって言ってんだろ?」

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