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プリンス×プリンセス

第67章 懐かしき異郷

『ディオチェスター王子は、私の尊い人ですから』

グレイスも一人っ子だって話だし?

13歳の多感な時期に、年上の他国の王子を見て、憧れの念を抱くなんてよくある話だとも思う。

だけど、それから何年も経った今、恥ずかしがる素振りもなく、堂々と自分の意見を伝えてきた…ってのが。

あのさ、姉上。

グレイスの事を夢見る乙女のように想像しているのなら…多分、間違ってる。

グレイスはディオの『爽やかとは言えない部分』も知ってて、その上で憧れてるんだ。

かなりなしたたかさじゃないか!?

口元を歪めて肩を竦めてみせれば、姉上は小首を傾げて

「なぁに?どうかしたの?」

その問いに首を振って答えた。

いいよ。姉上はそのままでいい。

そのほうが余計な心配をしないで旅行を楽しめそうだ。

「楽しみだな」

姉上に微笑みながら、自分にも言い聞かせる。

エストラーザに帰るまでの間。

ひとつでも多く、皆が笑顔でいられるように。

…もちろん、ディオも。

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