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蒼い月の下で

第2章 歌姫

胸の中が騒がしい。ずっと、この瞬間を待っていたような気がする。

もしかしたら、声も届くのかもしれない。お互い姿も見え、花の香りもーー可能性は、あるはず。

ミラは緊張しつつ、言葉にする。


「あ、あの……あなたは、吸血鬼の王様、なのでしょうか……?」


どうなの、だろうかーー。


少年はしばしの沈黙の末、頷いた。


「……ああ、オレはレイン・ブルーメルシェだ。空っぽの、王様だがな」


どういう意味ーーそう聞きたいのに、口にすることはできなかった。今にも消えてしまいそうな儚い笑みを浮かべ、少年はそれからぽつりと呟いた。


「……綺麗だな」


それは何に対しての言葉なのか、すぐに理解できた。


それはミラも同じだから。

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