どっちもぼっち。
第1章 みかん色に染まりたい柚と染まるきのないライム
ええい……。
もういい……。
こうなりゃ――最後の手段だな。
「もはは。見たかこのようにおれさまは不意に現れたクラスメートにも一切の動揺を示すことなく、それはそれは社交的に振る舞うことができるのだぞっ」
「や、めちゃくちゃ挙動不審(キョド)ってたじゃん」
急ぎ自身の通学鞄をひっ掴むと、
「ぬはは。対する彼もそれはそれは楽しそうに、ネズミーマウスにでも遭遇したかのような笑みをこちらに浮かべていたではないかハハッ」
「や、めちゃくちゃ無視(シカト)されてたじゃん」
急ぎ最低限の教科書類と筆入れをかっ込み、
「むわはは。どうだい今後はこのおれさまを参考に学校生活を渡り抜いてみないかい、ひとりよがりを哀する不人気者さんッ?」
「や、君こそ、めちゃくちゃ不人気者(ぼっ――」
「……そりゃあああっ! 聞かザルのポーーズっッ!!」
ガラガラガラッ、ドーン!
打ちひしがれた自意識(プライド)を悔しさの翼(バネ)に変え、一陣の風はそこを駆け抜けた。
要は逃げるが勝ち。
俺は決して他人からは称されたくないその言葉を聴き終えるよりも前に両耳を塞ぎ、大声で自らのポージングをさけび終えるよりも前に教室を飛び出した……。