どっちもぼっち。
第2章 部屋の角においやられる埃と、進んで角にむかう塵
名前に“優”という字の入ってるやつに、優しい人間はいないと思う。
ファーストネームの段階で優しく接することを強要されてるやつが、心からの優しさを振り撒くことができるとは思えない。
だいたいテスト用紙に名前を書くだけで、約5秒程のハンディキャップ(一般的に考えて太郎くんと、画数を書く速度で割ってそこに疲労感を足して比べてみました)を背負わされる難しい字を有してる時点で、他人に優しくなんかできるか。
『苦労を負えば負うほど、ひとに優しく接することができる』
なんて言葉は、卑屈でマゾヒストな大人が卑屈でマゾヒストに過ごした人生を慰めるための、世迷い言だと思う。
『ひとに優しく接していれば接しているほど、その優しさは返ってくる』
なんて言葉はそれこそただの綺麗言だ。それで報われなかったのはどこのどいつだよ。
朝のHR前。窓際うしろから二番目の席こと、教室の片隅にて。
読んでもない教科書を立てて読んでるふりをしながら、いまはいない名付け親を憎んだ。