アイツまで徒歩5分
第9章 どちらかと言えば……?
異様な――――…
ふわりと二人を包む空気が…
何故か今までのビジネス相手では感じなかった空気だ…
「そよ子さんは、音大生でしたね?そのケースはバイオリンですか?」
陣ヶ岡さんは、そよ子さんに席までエスコートすると…自然な会話の流れのまま、彼女を座らせる…
「ええ―――…これしか自慢出来るものが私にはありませんから…」
そよ子さんも…男性にエスコートされなれているのか…
当たり前の様に会話は進む――――…
着いていけない俺は、二人をボーゼンと見ているしかなかった――――…
「今回…父から誕生日に部屋をもらったんですけど…
防音対策が甘い間取りでして…
バイオリンを練習出来る部屋が…無くて…
で、リフォームを考えた時…陣ヶ岡さんの記事を何かで見まして―――――…」
「光栄です…ありがとうございます」
陣ヶ岡さんは、微笑むと…
彼女も静かに微笑み返した…
あれ?何だか…次元が違う?
セレブな身のこなし…
セレブな会話―――――…
俺は、目の前で繰り広げられる異世界の会話に…
思考を停止した状態で眺めるしかなかった…