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恋愛成就の願いごと

第1章 恋愛成就の願いごと

「着いたよ」

「此処? なんかあんまり普通の場所と変わらないですね」

「うるさいわねぇ。ここには縁結びの神様がいるんだから」

 私は涼平の頭を小突いた。

「嘘ですよ。冗談です。しっかり祈っときます」

 涼平はそう言うと柏手を打ち、拝む。睫毛が長く横顔が綺麗だ。綺麗という言葉は、男の子には合わないだろうが、その表現しか思い当たらない。

「終わりました」

「じゃあ、少し話そうか」

「はい」

 それから私は、涼平と色々なことを話した。涼平は中学三年生で関西の男子校に通っているということ。明日のお昼には地元に帰るということや友達の話。話題は尽きることなく私を楽しませてくれた。腕時計をちらりと見る。

「涼平くん、そろそろ自由時間終わりじゃないかな?」

 一時四十分を指す腕時計を涼平の前に出す。本当はもう少し話していたい。だが、昨日はこっぴどく叱られたという話を聞いたので、素直に教えてあげることしか私には出来ない。

「本当ですね」

 私たちは無言で戻る。石段のところまで来ると涼平が口を開く。

「では、またです」

「はい」

 私は手を振る。涼平は走って行ってしまった。

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