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Tears&smile~大切な思い出~

第1章 Tears&smile~大切な思い出~

「苺ーご飯よー」

 階下から苺を呼ぶママの声。どれくらい泣いていたのだろう。鏡には泣きはらした目をした自分が映っている。明るかった空は、暗くなっている。

「いらない……」

 お腹は空いていない。どこにも行きたくない。

「苺ー早くしなさーい」

「いらない! もう、うるさい!」

 苺は大声で叫ぶ。すぐに階段を上るママの足音が聞こえてきた。ママは苺の部屋の鍵(外からだと10円玉で開く)を開けて、入ってくる。

「電気もつけないでどうしたの?」

「もう! 勝手に入ってこないでよ!」

 苺は近くにあったクッションをママに投げつけた。

「苺! どうして、そんなことするの!?」

 ママが怒りながらも困っているのが分かる。

「……もういいや。どうして苺は生まれてきたんだろう。苺なんていなきゃ良かった」

 ママとパパが離婚して、学校で悪口を言われてから、ずっと思っていたことを口走ってしまう。

 その瞬間、乾いた音が部屋に響く。頬に痛みが走る。

「そんなこと言わないで! あなたはね、ママとパパが愛し合って出来た子なのよ!」

「愛なんて吐き気がする!」

 本心じゃないのについ言ってしまう。あっ……と思った時には遅い。

「ごめんね……」

 ママのか細い声と泣き顔が目の前にあった。違うの。違うの。そうじゃないの。心で思ってはいても言葉に出ない。

 苺はどうすることもできなくて、家を飛び出してしまう。ママは立ち竦んで追いかけては来ない。

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