
Brilliant Brand blood
第3章 宵の果てに置いた記憶
背中に感じる吐息…………を思い出す。
「ホンマに何とかせんとあかんやん」
温かい湯気を立ち上らせる、お気にの檜の香りがくすぐる湯船に浸り、膝を抱えた手を外した。
湯あみ用の着物は肌に吸い付くが、何となく、気分が落ち込む。
「はぁ…………、何でこんな時にかぎって…」
やはり、ため息がこぼれる。
「満月は嫌いやねん」
湯船を上がりたくない。
食事の席にはどうせ、あいつが陣どるのだから。
まだ、顔を見たくない。
思い出せない抱えた子供をダブらせてしまいそうで………、
ヨコの顔だけは、見たくない。
