
Brilliant Brand blood
第3章 宵の果てに置いた記憶
ようやっと落ち着いた自分がいる。
そう思ったら、自然と身体が動いていた。
髪をふきながら意外に軽く感じる足を食事場に向ける事が出来ていて、脱衣場に置かれてあった着物に袖を通すのに何故か鼻唄を唄う自分がいた。
何もわからない自分の記憶。
家族さえ、覚えていないというのに。
なのにたった一つだけ、何故か覚えていること。
この鼻唄。
何故…………俺は覚えているんだろうか?
歌詞は所々あいまいだ。
けど、メロディーを覚えているのに戸惑わない自分がいる。
何度も何度も繰り返し、覚えている部分だけを口ずさみながら今日は軽い足取りでヨコがいる食事場に向かった。
