お嬢様と二人の執事
第5章 漂
心が通い合うと快楽は幾重にも深くなるのを沙都子は知った。
脱力し動けない沙都子を甲斐甲斐しく世話する神山は確かに優秀な執事だった。
身を清められ綺麗に整えられたベッドに躰を横たえた沙都子は出て行こうとする神山を呼び止める。
「お願い…一人にしないで。」
「沙都子様…。」
いくら心が繋がっても二人の間には大きな身分の隔たりがある。
現代日本に於いては認められていない身分の差。
しかし二人の間には大きく立ちはだかっていた。
「悟さん…お願い。」
目を潤ませる沙都子に結局神山は抗うことが出来ず広いベッドに自らの身を横たえた。
「私…お祖父様にお話しします。私の気持ちを…ちゃんとお話しして認めて頂こうと思っています。」
「沙都子様」
「時間が掛かるかもしれないけど…ちゃんと認めて頂くから…そばに…いて?」
「…ええ…何があってもおそばに…。」
「ありがとう。あと…私、高宮さんときちんと話をしたいの。
彼のあの瞳が…すごく気になって…。このままじゃだめだと思うから…。
構わないかしら?」
「沙都子様のご随意に…。」
神山はにこりと笑うとその表情を執事のものに戻し沙都子に言った。
「さぁ…もうお休みください。そばに居りますから。」
頭をゆっくりと撫でながら神山が微笑む。
その手の温もりに沙都子は夢の世界に誘われた。