お嬢様と二人の執事
第16章 ともにする人
「これ!すごいね。絢みてよ」
「麻紗、もう落ち着きなよ」
絢が周囲を見回して麻紗に注意を促す。
「ごめん。でもすごくない?」
そう言って麻紗が見ているのはあの智紀の描いた巨大な画だった。
麻紗と絢の足元の床には強化ガラスが張られその下に東堂グループが開発した8Kのディスプレイが埋め込まれていた。
智紀が望んだ形がそこに具現化されていた。
初めてその絵を見た日、デートに誘われた沙都子。
驚きつつも沙都子は智紀とデートという名の視察を行った。
工事中の美術館を訪れ、中を見ながら様々な検討を行った。
そのなかで智紀からアイディアをもらいさらにブラッシュアップさせた沙都子。
そして懸案になっていた智紀の作品の展示方法もようやく決まった。
この展示だけは完全な常設になる。
この先、企画展なども随時行う予定になっているがこの絵だけは常にここにあることになる。
実際にこの絵を見たものは誰もそれに異議を唱えなかった。
「ね?凄いでしょ、この絵」
沙都子が麻紗と絢に声を掛けた。
「うん、凄いね。これ。描いたのって」
麻紗が視線を沙都子と絵画の間をいったり来たりさせながら聞く。
「そう、悟さんのお兄さんの智紀さんが描いたものよ。あとで2人にも紹介するね?」
会見前の緊張を解すように沙都子は絢と麻紗との時間を楽しんだ。