テキストサイズ

お嬢様と二人の執事

第5章 漂

心は、神山さんにある。

だけど、この孤独な人を放っておくことができない。

どうにかその根源を探ろうとして、こんなことになってしまった。

情けなくて、涙が出る。

人を救うなんて、おこがましいこと考えなければよかった。

「沙都子…泣かないで…」

一也さんの手が、私の頬を包む。

涙を拭うと、そっと唇に触れた。

「貴女は…綺麗だ…どこまでも綺麗だ…」

そういうと、そっと私の身体を抱きしめた。

「汚れているのは、俺だよ…」

ポツリポツリと、一也さんが語り始めた。

それは、あまりにも衝撃的で…

全てを聴き終わった瞬間、私は一也さんの胸に泣き崩れた。

泣きたいのは一也さんだったろう。

だけど、私の涙は嗚咽は留まることを知らなかった。

泣いて泣いて、喉も涸れた。

だけど心に沸き立つ悲しみが、一向に私を止めなかった。

一也さんの身体にしがみつき、精一杯抱きしめた。

髪を撫でて、流れる涙を拭って。

そのまま抱きしめた。

じっと二人で抱き合った。

抱きしめる手の痕が、濃くつくまで抱き合った。



時間を忘れて…。




そのまま二人、漂った。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ