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お嬢様と二人の執事

第5章 漂

沙都子side



「一也さん…?」

泣きながら、私の身体の上で気を失った。

どうしよう…

そっとその背中に手を回した。

抱きしめると、まだ身体が熱い。

きっと私は、触れてはいけないところに触れてしまったんだ…。

汗に塗れる背中をそっと撫でた。

「ごめんなさい…」

苦悩するような寝顔を見ると、心が痛んだ。

そっとベッドに横たえると、一也さんの茎からコンドームを引き抜いた。

伸びたそれを縛り、ゴミ箱に入れる。

ティッシュで一也さんを拭っていると、掠れた声が聞こえた。

「そんなことも…神山が教えてくれましたか…」

静かに首を横に振った。

「初めての男が教えてくれました…」

和也さんの目が大きく見開かれた。

眼の奥が熱くなった。

「私は、汚れた…」

悲しかった。

一也さんの痛みを吸い取れるほど、自分は綺麗ではなかった。

何があったのか、わからないけど…。

なんの力にもなれない自分が、非力でちっぽけで、役立たずに思えた。

私を抱くことで、全てを忘れてくれればいいと思った。

その苦痛から逃れられるなら、それでいいと思った。

でも…一也さんは、救われては居なかった。

私の身体が汚れているから…。

一也さんの孤独を埋められるほど、綺麗じゃないから…。

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