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お嬢様と二人の執事

第6章 過去

夕方、体温計で熱を測るとやっと平熱まで戻っていた。

「良かったね。明日は働けるね。」

「ごめんな。高宮にも迷惑かけた。」

「全然…そんなことないよ。」

そう言うと、神山は微笑んだ。

「お前は、いいフットマンになるよ。」

「えっ…なんで?」

「秘密…。」

いたずらっぽく笑うと、神山は目を閉じた。

そのまま暫くすると規則正しい寝息が聴こえてきた。

俺は白河のおばさんに頼んで、洗面器にお湯を用意してもらった。

寝ている神山のパジャマを開くと、タオルを濡らして身体を拭いた。

「あら…一也、偉いね。」

白河のおばさんは微笑んだ。

俺も笑い返すと、おばさんはにっこり笑って出て行った。

ぐっすりと眠る神山は目を覚まさない。

身体を拭いているうちに、俺の中でだんだんと決意が固まってきた。

俺は…この人を追い越したい。

この人よりも、大きな人間になりたい。

たった二つしか年は違わないけど、この人は俺よりも何倍も大きな人で…。

いつか…追いつきたい。

そして、神山と同じ景色を見てみたい。

「ありがとう…神山くん…」

そうつぶやくと、猛烈に恥ずかしくなって、慌ててパジャマのボタンを閉じた。



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