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お嬢様と二人の執事

第6章 過去

医者が来て、風邪だと診断した。

薬を後から助手の人が持ってきて、部屋はしんとした。

白河のおばさんが氷嚢を持ってきてくれて、神山の額に当てていった。

「あなたも無理はしないのよ?」

そう言って部屋を出て行った。

神山のベッドの横に簡易ベッドを据え付けた。

灯りを最小限の暗さにして、ベッドに入った。

そのままいつまでも神山の横顔を眺めた。

…いつか…

いつかこの人より、大きな人間になれるだろうか…

不意に、神山の目が開いた。

「あれ…俺…?」

「倒れたんだよ。」

神山が俺を見た。

ベッドから立ち上がると神山の頬に触れた。

熱い。

「お医者さんが、風邪だって。薬、飲める?」

こくりと頷くから、水差しからコップに水を注いだ。

身体を起こすと、コップと薬を渡す。

素直に薬を飲むと、また身体をベッドに横たえた。

「明日は休んでいなさいって、旦那様が言ってたよ」

「え…そんな訳には…。」

「神山くんが仕事したら、俺が怒られるよ…。」

「え?」

「明日は日曜だから、俺が神山くんのお世話をしろって言われたんだから」



神山は素直に次の日は休んだ。

フットマンに、休日などない。

休みのない職業だから、神山は落ち着かないみたいだった。

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