お嬢様と二人の執事
第7章 溶ける身体
その日、遅い時間に高宮の車が館に戻ってくる。
使用人たちは、帰りが遅い二人を心配していた。
沙都子と高宮の姿を認めると、それぞれがホッとした顔をした。
神山は戻らない二人をずっと館で待っていた。
玄関で二人の姿を認めた神山は、衝撃を受けた。
二人の間の空気が変わっているのを、感じたのだ。
沙都子が神山を見つける。
瞬時にその瞳は潤んだ。
「…?」
訝しく思いながらも、沙都子をエスコートし部屋へ上がる。
高宮は車を車庫に戻しに行った。
部屋に入った途端、沙都子は泣きだした。
神山の背中に縋るように泣いた。
「沙都子…?」
ふたりきりの空間で、神山は戸惑いながらもその名前を呼ぶ。
「ごめんなさい…悟さん…」
「なにを…謝るのです」
そっと沙都子の方を向くと、その頬を掌で包む。
「高宮と話せましたか…?」
「私は…」
沙都子が床に崩れ落ちた。
「あの人に抱かれました」
神山の身体を衝撃が走っていく。
「ごめんなさい…。」
沙都子は顔を上げることができない。
しかし、この男を愛している。
こんな自分の心が、神山を傷つけている。
だが高宮の過去に触れてしまった。
後ろに引き返すこともできない。
「なんで…」
神山の掠れた声が聞こえた。