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お嬢様と二人の執事

第7章 溶ける身体

「なんで…」

神山の声が震える。

それを感じ、沙都子は余計に顔を上げることができない。

目の詰まった絨毯の模様を、にじむ目で見つめているしかない。

「高宮さんが…一人で…」

「え?」

「あの人は、暗闇に一人で立っている…」

沙都子の言葉に、神山は目を閉じる。

「…聞いて…しまいましたか…」

神山はしゃがむと、沙都子を立ち上がらせる。

沙都子は驚いて神山を見つめる。

「さあ…ソファに座りましょう…。」

手を取って、神山は沙都子を導く。

ソファに座らせると、隣に腰掛けそっと沙都子の身体を抱きしめる。

「貴女が背負う必要はない…。」

「背負ってなんか…。」

両親を亡くしたばかりの沙都子に、高宮の過去は衝撃的だったろう。

後にも先にも、たった一度だけ告白された高宮の過去。少年だった神山にも、充分過ぎるほどの衝撃を与えた。

今でも、魘されていた高宮の姿をよく覚えている。

「高宮を…好きになりましたか…」

「…わからない…」

神山はぎゅっと沙都子の身体を抱きしめる腕に力を入れる。

「俺のことは…?」

「あ…」

沙都子の身体が震える。

「私には…もう資格がない…」

「沙都子…」

沙都子の目から、また涙がこぼれ落ちる。

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