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お嬢様と二人の執事

第9章 雪の降る街

あれから神山、高宮、そして沙都子の間には微妙なバランスが生まれた。

毎夜、沙都子の寝室には神山か高宮が侍っている。

身体を重ねることもあれば、ただ互いを抱きしめて眠る。

そんな夜を幾夜も過ごした。

2月に入り、沙都子も休んでいた分を取り返し、卒業のシーズンになった。

大学に置いていた荷物を少しずつ引き上げていると、絢と麻紗が沙都子を訪ねてくる。

「沙都子、卒業したら就職しないんだって?」

絢が探るように質問する。

「うん…まだ東堂のお家のことで、覚えなきゃいけないことたくさんあるから…」

「さとはトロいからなあ…」

麻紗が沙都子の頭を優しく撫でる。

「ほんと…絢ちゃんみたく、頭の回転がよく生まれたかった…」

思いつめた表情で言う沙都子を、友人たちは心配そうな表情で見つめる。

「さと…?最近、笑顔少ないよ?なんか悩んでるの?」

「え…?」

「そうだよ…笑顔が一番かわいいんだから…沙都子は…」

絢が沙都子の目を覗きこむ。

「私達にも言えない悩みなの?」

沙都子は答えることができなかった。

唇を噛みしめて、ただ俯いた。

「そっか…。わかった」

絢が沙都子の肩に手を置く。

「でも何かあったら、必ず私達を頼るんだよ?いいね?」

「ありがとう…。絢ちゃん…麻紗ちゃん…」

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