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お嬢様と二人の執事

第9章 雪の降る街

高宮の車で家に帰ると、荷物を片付ける。

「沙都子様…それは貴子と優子がやりますから…」

呆れたように高宮が言っても、沙都子はこれだけは譲らなかった。

自分の勉学の道具は、自分で管理しないと行けない。

母からそう教わっていたからだ。

「大丈夫です。これは私の手でしなければならないの」

そうきっぱり言う沙都子を、高宮は熱い目で見つめる。

「沙都子様…。ではお手伝いさせていただいても…?」

「ええ…お願いするわ…」

この館の専属執事の高宮と過ごす時間は長い。

あの日から、沙都子と高宮の関係は決定的に変わった。

だが、神山の存在が二人をこれ以上進ませなかった。

沙都子の心もまた、この関係のようにどちらにも踏みこむことができないでいた。

神山の子供が欲しいと願うほど求めているのに、高宮の瞳の奥にある寂しさを感じて身動きが取れない。

夜が来ると、どちらかの男に抱かれる。

浮遊した意識の中で、沙都子はひたすらシーツを掴み、その時間をやり過ごす。

どちらも好きになり過ぎないように。

無意識に、そう思っていた。

夜になり亘とのディナーを済ませると、館に戻る。

その足で、沸かしてある風呂に入り身体を清める。

自然、身体が反応する。

この時間になると、男に抱かれるのだと身体が覚えている。

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