お嬢様と二人の執事
第1章 沙都子
雨…。
火葬場の窓から眺める緑は、くすんで見えた。
煙突にはフィルターが付いているはずで、白い煙など出ていないのに…。
沙都子には、それが両親の灰が掛かっているかのように思えた。
山奥にある火葬場に、一人居る。
親類など居ない。
沙都子には、両親しか血縁は居なかった。
その両親が、突然の事故でこの世を去った。
たった一人になってしまった沙都子は、取り乱す暇もなく葬儀の手配に明け暮れた。
そして今、じわじわと実感している。
ひとり、だ。
この世でたったひとりだ。
手に持っているハンカチを握りしめる。
今の沙都子には、これしか握りしめるものがない。
バッグは車の中に置いてきてしまった。
膝の上で手を握り、どうにか泣き叫ぶのを堪えている。
怖い…。
これからどうすればいいの…?
22歳という年齢で、突然一人で世間に放り出されてしまう。
言い知れぬ不安が、足元からはい登ってくる、
今まで知らずに両親に庇護されていたのを思い知る。
大学の後期の学費は払ってある。
だから後は卒業すればいいだけ。
だが、生活はどうする?
住むところはある。
両親が一軒家を残してくれた。
だが、お金は…?
遺産がどれほどあるのか、皆目見当もつかない。
両親とそんな話、したこともなかった。
生命保険も入っているのかもわからない。
なにもかもわからないことだらけだった。
両親がどこで生まれて、どこで育ったかも。
今になるまで、知らなかったことに沙都子は気づいた。
助けて欲しい…。
誰でもいい…。
大丈夫だよって抱きしめて欲しい…。
お願い…。
火葬場の窓から眺める緑は、くすんで見えた。
煙突にはフィルターが付いているはずで、白い煙など出ていないのに…。
沙都子には、それが両親の灰が掛かっているかのように思えた。
山奥にある火葬場に、一人居る。
親類など居ない。
沙都子には、両親しか血縁は居なかった。
その両親が、突然の事故でこの世を去った。
たった一人になってしまった沙都子は、取り乱す暇もなく葬儀の手配に明け暮れた。
そして今、じわじわと実感している。
ひとり、だ。
この世でたったひとりだ。
手に持っているハンカチを握りしめる。
今の沙都子には、これしか握りしめるものがない。
バッグは車の中に置いてきてしまった。
膝の上で手を握り、どうにか泣き叫ぶのを堪えている。
怖い…。
これからどうすればいいの…?
22歳という年齢で、突然一人で世間に放り出されてしまう。
言い知れぬ不安が、足元からはい登ってくる、
今まで知らずに両親に庇護されていたのを思い知る。
大学の後期の学費は払ってある。
だから後は卒業すればいいだけ。
だが、生活はどうする?
住むところはある。
両親が一軒家を残してくれた。
だが、お金は…?
遺産がどれほどあるのか、皆目見当もつかない。
両親とそんな話、したこともなかった。
生命保険も入っているのかもわからない。
なにもかもわからないことだらけだった。
両親がどこで生まれて、どこで育ったかも。
今になるまで、知らなかったことに沙都子は気づいた。
助けて欲しい…。
誰でもいい…。
大丈夫だよって抱きしめて欲しい…。
お願い…。