テキストサイズ

お嬢様と二人の執事

第11章 桜

二人の言葉は、何日も沙都子の中で木霊していた。

後ちょっとで、何かが掴めそうだった。

昼間は研修、夜は逢瀬と何かをしながら、ずっと沙都子は考えていた。

神山と高宮。

二人とも、自分の人生には欠かせない存在になった。

どちらかを失うなんて、考えたくない。

時に神山、時に高宮の腕に抱かれながら、沙都子はずっと考え続けた。

絢と麻紗は沙都子に大きなヒントを与えた。

この友人たちに、沙都子は応えなければならない。

沙都子のベストの答えを出すのだ。

何が自分にとって一番幸せなのか。

何が彼らにとって一番幸せなのか。

そして、最高の友情を示してくれた友人たちに笑顔で報告できるような結果を…




春の長雨で、館の遅咲きの桜はすっかり散ってしまった。

寂しくなった庭を眺めながら、沙都子はぼんやりと外を眺めていた。

稲光が瞬いている。

雷鳴がだいぶ近い。

チカチカする空を眺めている沙都子の目には何も映ってはいない。

突然、館の庭をまぶしい光が覆った。

次の瞬間、大きな雷鳴が聴こえて思わず沙都子は床に蹲った。

地響きを上げて、音は内臓まで響いてくる。


コトリ…


心の重りが落ちた。


コンコンとノックの音がし、神山が部屋に入ってきた。

「沙都子様…今の雷…」

神山は思わず立ち止まった。

すっと立ちあがった沙都子が、まるで別人のように見えた。

沙都子はまっすぐに神山を見ていた。

その目にはとても強い光が宿っていた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ