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ヒールの音を響かせて、沙都子が廊下を歩く。


自然と廊下を歩く社員が道を譲る。

「おはようございます。東堂主任」

「おはようございます」

「あ、主任。資料、机の上にありますから」

「ありがとうございます」


あれから２年の月日が流れた。

沙都子は東堂本社のグローバルマーケティング部に配属になった。

部長は高宮が務めている。

沙都子は異例の速さで主任に昇格した。

しかし不平をいう社員は居ない。

１年前、沙都子は正式に東堂の後継者となった。

今は亘の跡を取るべく、他の社員とは一線を画した業務についているためだ。

沙都子はこの１年でめきめきと頭角を表した。

高宮が驚くほどの成長を見せた。

２年前、両親の墓地で泣いていた沙都子は、見る影もない。



「おはようございます」

自分の机に荷物を置くと、すぐにブリーフィングルームへ向かう。

ノックをして扉を開ける。

「おはようございます。メール届いてるかしら？」

「おはようございます。届いていますよ？」

高宮が立上がる。

「見てもいい？」

にっこり沙都子が笑うと、高宮は首をすくめた。

「特別だからな」

「はぁい」