
お嬢様と二人の執事
第13章 未来への階
「麻紗様は今の事務所から独立とかは考えられたことはないのでしょうか?」
突然の高宮の問いかけに麻紗は戸惑いつつも答える。
「いずれは…と思っています。でも実際にはある程度のクライアントが付かないと難しいです、この分野は。顧客になりゆる企業の数に限りもありますし…。私自身の経験もまだ浅いので…。」
麻紗は少し悔しそうな顔をしていた。
専門性の高い分野。
一度、企業の顧問になるとなかなか別の弁護士に依頼が行くこともなく、ある意味穏やかな世界ゆえ新規参入が難しい部分もある。
「しばらくは修行の身というやつでしょうか?」
麻紗は切り替えるように笑顔を浮かべた。
「その修行というのは法律事務所でないと出来ないものですか?」
神山が麻紗に問いかけた。
素人ゆえの単純な疑問。
麻紗はゆっくりと首振った。
「確かに法律事務所に所属しているケースもありますが、基本的には弁護士個人の人脈に頼ってる部分が多いように思います。
ある企業の顧問弁護士が関連会社の顧問を兼ねることが多いですし、弁護士同士の紹介などで顧問になるケースもあります。
一度顧問になると世襲に近い形で引き継がれるケースが多いです。顧問弁護士を次々と変えるのはあまりあるケースではないので。
あとは…企業内弁護士から顧問になるケースもあるみたいです。」
麻紗が現状を説明する。
その麻紗の説明に沙都子が麻紗の顔を見た。
