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お嬢様と二人の執事

第14章 遠い道

高宮を見上げた神山の目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。

「一也…」

「いつか、あなたが俺の話を聞いてくれたように…、俺もただ、話を聞きますよ?」

ぐにゃりと神山の表情が歪んで、高宮の胸に顔を埋めた。

声を上げて、神山は泣いた。

高宮はただ、神山を抱きしめ、その髪を撫でた。

暫くすると、泣き声も治まり部屋が静かになった。

「すいませんね。沙都子様みたく胸がなくて…」

「ホントだよ…色気ねえな…」

涙を拭きながら神山が起き上がってきた。

「ありがとう。一也」

きっぱりと言って、神山は立ちあがった。

ワインを注ぐと、一気に飲み干した。

「俺は…親弘兄から、性的虐待を受けてたんだ」

「えっ!?」

「いや、お前ほど酷いものじゃない。申し訳ないが、おまえに比べたらお遊び程度だ」

ほっと高宮は息を吐き出した。

あんな思い、するのは自分だけでいいと思った。

「申し訳なく思う必要はないよ」

「ああ…俺はね。嫌じゃなかった。だけど、いけないことだとはわかっていた。
だけど親にも言えずに居たのは、親弘兄が好きだったからだ」

またワインを注いだ。

「好きだから、我慢できたんだ。それがどんな際どいことでも。
なのに、ある日突然…親弘兄から突き放されてね。
あんなに俺の身体を好きにしていたのに、突然…汚いものを見るかのような目で…」

またワインを飲み干すと、グラスをテーブルに置いた。

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