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「わかり…ました…」

違いすぎる。

あまりにも今までいた世界と違いすぎる。

冷たいものに覆い包まれているような感覚に陥る。

もう自分は、自分であって自分ではない。

東堂という家の付属物になった気分だった。

「沙都子様、こういう事にも慣れてくださいませ…それが貴女を守ることにもなります」

「はい…」

つと、沙都子の頬を涙が流れていった。

「お母さん…」

「え？」

「お母さん…お父さん…」

沙都子は傍らのクッションを胸に抱くと、そのまま顔を埋めた。

今まで、生活の変化に驚いてあまり考えないようにしてきたことが、一気に襲ってきた。

このようなとき頼る腕が、すぐ近くにない。

亘は多忙で、年を取っている。

すぐに沙都子が縋れるような、距離感ではなかった。

では、誰が…？

誰がこの震える手を握ってくれるというのだろう。


誰も、いない。


たった一人でこれからも耐えていかねばならないのだ。

今の沙都子に、その決意をするのは酷であった。

二親を亡くし、生活環境が大きく変わった今、彼女は暴風に耐えるコスモスのようなものだった。

「お…母さん…」

震える沙都子の肩を、神山がそっと片手で包む。

「沙都子様…」

沙都子が顔を上げると、そっと神山の手が頬を包んだ。

沙都子は堪らず、神山の胸に飛び込んだ。

「お願いします…抱きしめてください…」