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お嬢様と二人の執事

第1章 沙都子

暖炉の火が赤々と燃えている。

ソファに座る沙都子の傍らには、神山が立っていた。

「…それは所謂、お嬢様教育ということですか?」

「左様でございます。本来なら、茶道に華道もというところですが、私がご指導できませんので、来年からとなります」

「そんなに…」

「大学の課題を優先させてください。その合間に、社交ダンス、マナーなど基本的なことから始めます」

「はい…」

大学の課題と就職活動だけでも精一杯だというのに…。

「あの…就職が決まるまでは、お稽古は減らして頂けますか?」

「は?」

神山の綺麗な二重の目が細められた。

「え…何か?」

「沙都子様は就職なさろうと思っていらっしゃるのですか?」

「あ、はい…もう4回生ですし、就職しないと…」

「この東堂の家におられるのに?」

「母も、祖父の元で秘書をしていたと聞いています」

神山は額に手を当てると、溜息をついた。

「それについては、私に一任してくださいませんか…」

「えっ…なんでですか?」

「東堂の名前が出てしまったら、沙都子様、自力で就職することは難しくなると思います」

「え…?どういうことですか?」

「つまり…どこからでも内定が出放題になるということです」

「あ…」

「どこの企業も、貴女との繋がりを欲するでしょう。貴女にどんなに実力があったとしても…」

沙都子は俯いた。

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