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お嬢様と二人の執事

第16章 ともにする人

智紀から東堂記念美術館用の絵が完成したと連絡が来た。

報告を受けた沙都子の命によりスケジュール調整が行われ、連絡から2日後、沙都子は神山と高宮とともに智紀の港区のアトリエを訪ねた。

「ようこそ。どうぞこちらへ。」

智紀の案内で室内に足を踏み入れる。

自然光をたっぷりと取り込んだ明るいアトリエ。

その壁面に立てかけられた巨大なキャンバスが目的の絵画だ。

神山が手配した500号のキャンバスは縦およそ2.2m、横およそ3.3m、畳4.5畳分の大きさ。

その巨大なキャンバスに描かれた絵に沙都子は心を奪われた。

そこに描かれた絵は非常に不思議な絵だった。

巨大なキャンバス全体を見ると写実的な風景が描かれている。

しかし、キャンバスに近づいてその筆遣いを見ようとすると全く違うものが見えてくる。

いくつもの細かい風景が様々な手法で描かれている。

それは細密画であったり、ポップなイラスト調であったり…。

いくつもの絵が連なって出来る不思議な世界。

何人もの教師から智紀が吸収し作り上げた智紀だけの世界だった。

絵の素人の沙都子にはその凄さをなんと表現していいかわからないが、とにかく圧倒されその世界に引き込まれた。

ただ黙ってその絵を見つめ続ける沙都子。

神山と高宮はその背後を守るように、黙ったまま立っていた。

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