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お嬢様と二人の執事

第2章 執事と沙都子

神山side



「沙都子様…もしかして…初めてですか?」


思わず口をついて出た言葉。

その可憐な様に、我慢ができなかった。

しかし、その答えは予想外だった。

ゆっくりと首を左右に振ると、俺の身体に回した腕に力が入った。

沙都子様を抱きしめていた腕の力が緩んでしまった。

猛烈な嫉妬が、心の奥底から湧き出した。

「初めてではないんですね?」

詰問する口調にならないよう、ゆっくりと発音する。

またこくりと頷くその目には、涙が浮かんでいた。

気がついたら、沙都子様の身体が小さく震えている。

お嫌なのか…俺に抱かれるのが…。

「沙都子様…ではなぜ震えていらしゃるんですか?」

離したくない。

ここで、引き下がれる訳がない。

たとえ、沙都子様の心に思う男があっても…。

しかし、沙都子様の口から出た答えは意外なものだった。

乱暴に奪われ、卑劣な言葉で傷つけられたのだと…。

初めてを奪った男への、猛烈な怒りと嫉妬が渦巻いた。

それは今まで経験したことのない感情で。

自分でどのように処理をしていいのかわからない。

沙都子様の肉体から出る、悩ましい香りが俺の頭を働かせない。

限界まで堪えていた一線が、音を立てて崩れた。

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