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不透明な男

第12章 惑乱


おい、なんか飲み物買ってこいとAはBを外に促した。


智「なんだよ、まだ居座る気?」


Aはふぅーっと大きな溜め息を吐くと、俺に視線を向けた。


A「もういいだろ。話せよ」

智「何をだよ」

A「余程の事が無いと、こんな事しないだろ。…泣きそうな癖に何を強がってる」

智「元々がこんな顔なんだよ」


途端に俺をふわっと包む。


智「ちょ、なにして」

A「泣けばいいだろうが」

智「は?」

A「吐き出せよ、辛い事全部」

智「辛い事…?」


ああ、言ってしまえ、楽になるぞと俺に逃げ道を作ろうとしてくる。


智「は…?バカじゃねえの」


Aは只無言で俺を見る。
俺が吐き出すのを待ってるんだ。


そんなAの耳に俺は顔を寄せた。


智「どうせ今日も持ってんでしょ?」


Aの胸の内ポケットをまさぐりながら、俺は掠れた声で耳に囁く。


智「…やっぱあるじゃん」


カサッと音を立てて出てきたそれを指で挟んでヒラヒラと振る。


A「成瀬…」

智「ふふっ、成瀬って呼んでくれるんだ」


俺は笑いながらAのネクタイを外しに掛かる。
胸元のボタンを外すと首に唇を這わせながらAのベルトをカチャカチャと弄る。


智「あんな女じゃ満足しねえよ…」


下着の上から手を這わせ、少し擦ってやるとすぐに反応した。


A「お前、どうした…?」

智「どうしたのはそっちでしょ。もうこんなだよ?」


もう俺を考えさせるな

頭がおかしくなってんだよ

また後でゆっくり考えてやるから、今は忘れさせろよ


智「ん…」


Aの熱を欲して執拗に擦り始めた俺をソファーに押し倒す。


智「ん、ふ…」




夫人に付けられた傷に吸い付かれ、俺は甘い吐息を漏らすんだ。





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