
不透明な男
第12章 惑乱
固まってしまったAに腰を押し付けて動けと促す。
智「ふふ、ヘンな顔」
A「ヘンなのはお前だろう…」
我に返ったAはゆっくりと腰を動かしながら俺に覆い被さり抱き締めてくる。
A「なんでそんな事を…」
智「お前が考えさせるからだろ…」
A「いつもそんなを事考えてたと言うのか…?」
智「ん…っ、は、そんなんじゃねえよ…」
早く俺を堕とせ。
何も考えさせないでくれと言ってるだろ。
A「お前を殺せる訳無いだろう…?」
智「ん…、じゃあ、ヘンな事、考えさせるなよな…」
抱き締める腕にぎゅっと力を込めると、腰の動きを増す。
智「んぁ、あっ、く…っ」
A「目を、見せろ…」
智「や、やだ…よ…っ」
A「目を開いて俺を見ろ」
俺の顔を掴むと無理に目を開かせる。
智「頼むよ、もう、考えさせないで…」
A「成瀬…」
俺の開いた目からは涙が溢れた。
きゅううっと締め付けられた胸から感情が溢れる様に、俺の涙はポロポロと頬に流れた。
智「お願いだよ…、今だけでいいんだ。忘れさせて…」
A「ん…、分かった…」
俺の願いを叶えてくれるとAは言った。
その言葉に、俺は安心して目を閉じる。
智「んぅ…、ふ…」
目を閉じて真っ暗闇だった俺の中に熱を与える。
ふと暖かくなった唇は、熱い舌で覆われる。
智「んぁ、あっあ」
唇の温もりに翻弄されていると急に激しく揺さぶられ、俺の中心は疼き始める。
A「いいよ、今だけは、俺が忘れさせてやる…」
俺の涙を唇で受け止めながら、疼いた中心を握り込む。
擦りながら同時に激しく揺さぶられると、俺の真っ暗だった視界が白く明るんで行った。
智「はっ、はぁっ、あ、あぁ…っ、く」
この瞬間だけは、俺は何も考えなくて済んだ
たった一時、この何も考えられない時間が
俺を救う唯一の術だと思えたんだ
