テキストサイズ

恋空予報

第9章 番外編 俺の気持ち

櫻井side




雅紀に恋人ができた。



二宮先輩。



雅紀は、「ニノちゃんニノちゃん」って
楽しそうに話をする。



この時、恋人っていいなって
思い始めたんだっけな。



「翔ちゃんは恋人、作んないの?」

「んー、別にいいよ。
俺には雅紀がいるから」

「ふふ、ありがと。
ずっと親友だからね!」



雅紀は毎日、俺を引っ張ってくれた。



楽しく、面白い話をしてくれた。



困ったことがあれば、すぐに駆け付けて
俺を助けてくれた。



でも、雅紀は「翔ちゃんは頼りになるね」って。



むしろ、雅紀の方が頼りになるよ。



俺は、臆病だからいつも
雅紀の背中の後ろに隠れて
コソコソやって生きてる。



…だから、雅紀は頼りになる、
兄貴みたいな存在で。




「翔ちゃん、松本先輩が呼んでるよ?」

「あ、うん。部活のことかな…」




潤先輩は、頼りになる。



面白いし、サッカー上手だし。



憧れる気持ちもあった。



けど、俺は男で、
先輩も男で。



こんな気持ち、知られたらきっと、
軽蔑されるだろうなって。




「あ、翔、時間いいか?」

「はい、大丈夫ですけど…」




潤先輩は俺に缶コーヒーを
ほい、って渡した。




…ブラック、飲めないんだけどな…。



けど、潤先輩にもらったから、
なんか嬉しくて。



無理して飲んだのを
今でも鮮明に覚えてる。




「…先輩?」

「好き、なんだよね…」

「なにがですか?」




潤先輩は、「わかんないの?」って
俺をみて言う。



そりゃ、わかんないよって
ツッコミそうになった。



けど、そんなことをする前に、
俺たちの影がゆっくり重なったんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ