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黒猫ニーノと相葉さん。

第12章 スーパームーンの夜に。

晩酌をしながら
一人、テレビをボーッと眺めた。


現実逃避するかのように
ビールばかりが進む。

いや、どちらかと言えば
ニーノと過ごしたあの一ヶ月の方が
夢物語だったのかな



まるで浦島太郎みたいだ。
翔ちゃんには
『鶴の恩返し』
って言われたっけな。

いっそのこと
俺の記憶も一緒に消えてしまえばよかったのに。





ー ピンポーン ー


現実に引き戻されるように
インターホン越しに
『お届け物です』
と告げられて。

受け取った荷物は
中身を確認することなくクローゼットの奥に閉まった。



「風呂入ってくるかな」



キッチンに立つのも
風呂に入るのも
眠るのも
一人じゃ寂しくなってる自分が情けなくなる。

ニーノが着ていたスウェットからはもう
ニーノの香りは消えていて。



「俺、こんなに切り替え悪い方だったかなぁ…」



自分で自分を慰めるのも
虚しいだけで。

触れたい。
ニーノに触れたい。


『愛してるよ』
って
思い切り抱きしめたい。



忘れるなんてできないよ





だってこんなにも
誰かを愛したのは生まれて初めてだから。

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