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黒猫ニーノと相葉さん。

第17章 夢幻泡影。

「なんでそんなこと聞くんだよ?
お前の方こそどうなんだよ、シゲ。」

シゲは一瞬ふわりと微笑って
そして目を閉じた。



…そりゃそうだよな。
好きな女の一人や二人
居るに決まってる。

オイラに相談したいのか?
あんま聞きたくねぇな…。
でも…



「オイラは恋愛相談に乗れるような器じゃないけど
応援ならしてるからよ…。」


「ホントに?」

「ああ。」


「ふふっ。ありがと。
でもね
僕のしてる恋は
世界一難しい恋かも。」


「大袈裟なんだよ、シゲは。」



胸がチクリと痛む。
クソッ。なぁーにが『世界一難しい恋』だ。
シゲのくせに生意気だ!

昔はさ
『オーノ君!オーノ君!』
ってウザイくらい犬みたいに付いてまわってさ
そう、今のユーリみたいに。

あん時の可愛らしいシゲはもう居ないんだな。
俺のことなんて置いてけぼりにして
お前はそーやって大人のオトコになっちまうんだ。


ここんとこ、お前の仕草や言葉にドキッとしたりしてたのはきっとそのせいだ。
恋をすると綺麗になるって言うもんな。
そもそも
それが男にも言えることなのかっつったらわかんないけど。



「オーノ君」


「あん?」



「引いてるよ?」

「へ?」

「魚。」


「あっ!!」


急いで立ち上がって竿を引いた。


「…あーあ。」


一歩遅かった。
そんなこと考えてたから
折角引いたのにバラしちまった。



逃がした魚はデカかった、ってか。

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