黒猫ニーノと相葉さん。
第17章 夢幻泡影。
その日
どれだけ待っても
シゲは帰ってこなかった。
「なぁ、頼むよオカダッチ!
シゲに会わせてくれよ!」
「駄目だ」
「なんでだよっ…!」
「駄目なもんは駄目だ!
しつこいぞ、オーノ」
「… 。」
オカダッチが
ふぅっ、と溜息をついた。
「俺だって意地悪で言ってるんじゃないんだ。
そのくらいわかれよ、オーノ」
「わかってるよ…」
「心配するな。
親神様はお前たちの知らないうちにシゲを人間界に堕とすようなことはしないよ」
フラフラと歩いて
気付けば導かれるように
シゲの部屋の前に立っていた。
ノブに手をかけて
ドアを開ける。
綺麗にしてんな。
シゲらしいや…
本棚にはたくさんの本が並んでいた。
ノートだ…
机の上に無造作に置いてあったノートをパラパラとめくった。
新作の小説か。
マルたちに話してたやつかな。
登場人物の名前がまだ決まっていないのか
主人公の男の名前は『S』になっていた。
相手は…『K』か。
Sは…
シゲ?
じゃあ、Kは?
ペラペラとページをめくると
途中から白紙で。
ん?
よく見ると
一番最後のページの
隅っこの方に小さく文字が書いてあった。
『慶一郎』。