イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「…!これって…」
「甘さ、大丈夫でしたか?」
ルナに問われ、テリザはこくりとうなずいた。
「はい…すごくおいしいです。でも、どうしてこの甘さって…」
テリザの好みは、いささか過剰ではないかと言うほど甘い味だ。飲み物にもいつもたくさん砂糖を入れていた。
「それもラッド様から伺っておりました。」
ルナは微笑んだが、テリザは僅かに動揺して、カチャンとカップとソーサーで音を立ててしまった。
(…朝の紅茶だけで?覚えてくださったんだ…。)
テリザは目を伏せた。
彼女の思いを察したのか、ルナは口を開いた。
「…ラッド様からは、テリザ様が寂しくないように見ていてほしいと言われておりましたから。私からも、テリザ様のことは気になっておりましたし…。」
ルナがそっと言うと、テリザは顔を上げた。
「大丈夫ですよ。私は、平気です。」
「……。」
きっぱりと言ったが、ルナはまだ浮かない顔をしている。
「そんな顔、しないでください。私は大丈夫ですから。」
テリザが繰り返して言うと、ルナは頭を下げた。
「詮索しようとして、すみませんでした。」
「いえ、そんな、謝らないでください。」
テリザは首を振った。
そうすするとルナはためらいながらも言葉を紡いだ。
「あの…立場は違いますが、いつでも話は聞きますから…無理、しないでくださいね。」
「……。」
テリザはただ微笑しただけだった。
それを見て淡く微笑むと、ルナはもう一度頭を下げた。
「長居してすみませんでした。失礼致します。」
「いえ…。ありがとうございます、わざわざ。」
ルナは部屋を出て行った。