イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
*
「え、テリザが?」
「はい。ラッド様の帰りが遅いことはテリザも知っていますし、明日にでもと思っていましたが…。」
テリザが本のことを言っていたと伝えたハルに、ラッドはうなずいた。
「そうか。思っていたより早く切り上げられて良かった。まだテリザが起きているようなら今から渡しに行こう。」
伝言をありがとうとハルに言い、ラッドは一人で屋敷の書斎に足を向けた。
(そう言えば、本を読むのも久しぶりだな。)
幼少期から本は好きだった。しかしここしばらくは忙しくて、本を読む間もない程だった。
指先を本の背表紙に滑らせ、ラッドはあるところで手を止めた。
(…懐かしいな。)
ふっと表情が緩んだ。習慣から、それは子供の手でもとどくような低い位置に置いてあった。
―――From the Earth to the Moon(月世界旅行)。
本と本の間から引き抜き、手に取る。
中身は見ずとも、よく覚えている。彼女は、好きだろうか。
ラッドは軽く鼻歌を歌いながらいくつかそれと一緒に本を選び出し、テリザの部屋へと向かった。